ミツバチのアンモラル
傍にいてくれるのに、過保護なほどに守られるのは辛かった。
辛い、寂しい、苦しい……そう感じるようになって。
動きづらかった身体にも無理がなくなってきた頃、事故の直後に見えなかった事実に、私は気づき始めた。
私の告白が、なかったことにされている。
正確にいえば、まだ告白はしていないし語弊はあるのだけれど。
大事に大事に、扱われる。
妹として。
それは、確かに昔から変わらないことだけれど、事故の直前に交わした、恋愛の情をぶつけられる覚悟は、圭くんからは微塵も感じられなくなっていた。
なのに、おかしいことがたくさんあって。
圭くんは私をなによりも優先するようになった。
私を、世界で一番だとでもいうふうに愛おしく見つめる柔らかな視線の中に、昔とは違う種類のものも足されている。それは何かと問われたら、盛大な甘やかしを前に、すぐに鳴りを潜めてしまうから判断のしようもない。
囲われるように守られる。
試すようについた私の我儘も、当然の如く叶えようとする。
それらは、まるで恋人を盲目に溺愛するようだと、周囲の友達は言った。私も、時折自身を律する必要があるくらいには勘違いをしてしまい。
甘い甘い圭くんは、そうしていないと死んでまうみたいに、私に添ってくれる。
充分大事にされていた、以前の近すぎる幼馴染みのときよりも、それらは行使されていた。
……なのに、圭くんから私に触れることは一切なくなった。
それは、妹を慈しむ類いのスキンシップでさえも。
気づいたのは、躓いた私を抱き留めようとした圭くんが戸惑ったときだった。地面にお尻をつけた私を見て、圭くんは青褪めた表情でその場に放心してしまい……現実に引き戻そうとした私が腕を触ると、それは拒否されることはなかったのだけど。
圭くんの不安定さが、心配で堪らなくなった。
「もう、いいよ」
もう、そんなに自分を追い込むように私を守らなくてもいいと告げたあと、圭くんと私は、なんでこんなことをと思わなくもなかったけれど、話をした。