ミツバチのアンモラル
圭くんはそんな状態だったから、当然の如く反対をしてきた。
怪我はもう大丈夫。松葉杖だってとっくに必要としなくなっている。スタートの遅れた大学の講義にも、周囲の支えがあってついていけている。毎日楽しくやれている。夏休みにはバイトだって出来るくらいにはもう元気で。
私がそう言って笑っても、圭くんは全てには頷いてくれなかった。
「圭くん……ごめんね」
「なんで、華乃が謝るんだ」
「巻き込んじゃってごめんなさい。私が勝手に事故に遭っちゃって……というか信号無視で突っ込んできた車が悪いんだけど。……なのに、なんで圭くんがそこまで気にするの? 血だらけだっただろう私のところに飛んできてくれたんでしょ? 救急車一緒に乗ってくれて、ずっと一緒いてくれて、ずっと今まで圭くんの時間を使って助けてくれて」
「そんなっ……こと……は……勝手になんてそんな、こと……っ」
責任の重さを間違えていることは、解ってもらえなかった。
圭くんは頑なで。
傷も目立たなくなった私に、変わらず過度な罪悪感をもつ。
「――私、圭くんとずっといられるのは嬉しいけど、そんな謝罪の気持ちだけでなんて、嫌だ。私は……っ」
「っ、華乃っ!!」
罪悪感がそうさせるのかなんなのか。
ああ……やっぱり想いを告げることを回避しようとしているのかと、そんな圭くんを目の当たりにした。
「僕は……華乃を大事にしたい。大事な妹なんだ。守りたい。それだけで……」
駄々をこねるようにも思える圭くんと、それからも長い時間話をした。
ちゃんと、辛いときは頼りますと伝えると安堵される。遅い時間の帰宅、他にも困ったことかあれば駆けつけると、圭くんは、それくらいはさせてほしいと声を震わせた。
おはようとおやすみ、いってらっしゃいといってきます。私がちゃんと居ることを分からせてほしいと、ごめんと呟きながら懇願された。