ミツバチのアンモラル
結論に達してしまうと、途端に目が冴えてきた。もうこの勢いで圭くんのところに走っていってしまおうと考えていたらそれは見抜かれしまったようで。
「今日はもう寝ろ」
「ええ~、眠くない」
「時間が時間だし、……兄貴にも、落ち着く猶予をやれよ」
「……」
圭くんのことを引き合いに出すなんて、智也は意地悪で頭がよくお働きになる。
けれども、どうやら近づくのを許されてはいるらしい。
「今頃きっと死に体状態だろうしな。三十過ぎた男が追い詰められて逃亡とか、情けなくて俺は見たくねえから今日はやめとけ」
「追い詰めた張本人が何言ってんの」
「お前……。違うだろ。兄貴を真に追い込んだり出来るのなんて、華乃だけに決まってる。それをもうちょっと思い知れ。…………てか、嬉しそうな顔してんなよ変態」
「してない」
どうやらだらしない顔でもしていたようで。
仕方がない。智也の言うことが次第に私に染み込んでくる。
徐々に、徐々に。
私は、私が望んだように圭くんに愛されていて。
今までの圭くんの全てが、おかしなことも心配になることも嬉しかったことも幸せなことも、全て、私にまつわっているなんて。
圭くん。私は、それを真に受けてしまっているけど、いいの?
早く。
早く、圭くんに会いたいと、心も身体も全てが焦れた。