ミツバチのアンモラル
 
 
 
 
七つ歳上の圭くんには、オムツを取り替えられたという黒歴史もあるくらい世話を焼いてもらった。
当時の写真には、幼い圭くんが滅茶苦茶でぎゅうぎゅうに私と智也のオムツを纏わせるといった微笑ましい光景のものが何枚もある。


今日は帰りが早かったので両親と揃って晩御飯を食べ、お風呂上がりに缶酎ハイを部屋に持ち込んで週末に向けての夜を寂しく過ごす。ツマミは、主役圭くんと今日はおまけの智也と共に歩んだ成長の記録、アルバムを捲りながら。


何代か前の人に外国の血筋が入っているお隣さんは、隔世遺伝なのか圭くんにだけその要素が少しだけ強く出ていて、色素の薄い緩く波打つ髪や、日本人とはすこしだけ質の違いを感じさせる白い肌。瞳の色は、殆ど日本人のそれと変わらなかったけれど、なにかしら透明感のある色素がプラスされていて、吸い込まれそうとはこういったことを指すのだろうと、とある恋愛小説を読んだときに圭くんを思い浮かべた。
それに加えて、各々のパーツの完成度と絶妙な配置により、今、その当時の写真を眺めても天使のように愛らしい。これが小学一年生とか危険すぎる。誘拐とか変質者とか諸々。
くりくりした目でどちらかの母親に向けた上目遣いのこのアングルの写真なんてヤバい。後ろで眠る純日本人極まりない赤ちゃんふたりが劣っている。赤ちゃんって最強なはずなのに霞む。


圭くんも、歳の離れた弟たちが可愛くて仕方なかったんだろう。智也と私が誕生してからは、友達よりも私たちを優先することも多かったと、圭くんが私たちと過ごしていた年齢に自分がなってみて、初めてそれを感じた。
思い至り謝ってみれば、友達が少なかったからねなんて言うから、なんだか私が泣いてしまい、逆に慰められてしまった。


――ああ。そういえば、まだあの頃は触れてもらえていた。


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