青空の約束 ~先輩と私の初恋~
「こんなの初めてなんだよね、俺」
「…えっ?」
数百メートル先の遠くを見つめる先輩の横顔は今までにないほど清々しく、何かから解放されたような軽い表情だった。
「人間不信っていうか…今まで人と関わることを避けてきたとこあったし、自分から関わろうとしなかったのに」
「のに…?」
「吹季と出会って変わった気がする。こういう大人数で集まる場所とか嫌いだし一人でいる方が楽だったけど、今は悪くないって思う」
「先輩…」
初めて先輩の心の真の中身がほんの少しだけ見えたような気がした。そして自分のことのように嬉しくなる。
まだまだ先輩のことは知らないことばかりだけど、こうやって少しずつ分かり合っていけばいい。
だからもっともっと先輩のこと教えてくださいね。
だんだん欲張りになっていく自分を、つい許してしまった。
「私、嬉しいです…!!また明後日から始まる学校頑張れそうです!」
「…単純だな」
夏の夜、白石家から聞こえてくる賑やかな声は夏の虫たちに負けず鳴り止むことはなかった。