君は僕のもの
…樹side




「絶対、嫌だ」


映画館のチケット売り場の側で、断固として『嫌』と言い続けているのは、

他の誰でもなければ…俺。だったりする。




「何で?どーしてっ!?」


半泣きの表情で俺のことを見て駄々をこねる愛梨。



…何が起きているかというと、





「何で俺が、そんな映画観なきゃいけないわけ?」


「だってさっき樹がいいって、言ったじゃんっ」


珍しく不機嫌な顔をして俺に強気で言い返してくる愛梨は、
俺から顔を背けるようにしてブツブツ文句を言う。




まぁ、確かに言ったけど…


言ったけどさぁ、





「…だからって、俺こんなラブストーリー的なの無理、興味ない」


俺も尽かさず反論する。




「だ…だって、亮が出てる最新作のだから…っ、観たかったのに」


亮ってのはコイツが好きなアイドルグループのメンバーで1番人気の男。
はっきり言って、俺には何の興味もない。


あんな気持ち悪くニコニコ笑うような男は。



「俺は嫌だ」

嫌なものは嫌なんだから仕方ないだろ。



しかし…


「…樹はさ、子どもだよっ!自分勝手だよ!」

はぁ…っ?


何で俺が怒られてるわけ?



つか、でもコイツがここまで怒るのも珍しい。


それほど見たい、わけ?



こんな映画。


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