君は僕のもの
「『俺の目にはお前しか映らない』
…キャーっ!!こんなこと言われるなんて、奈々子ちゃん羨ましいよねっ!?ね?ね?」
奈々子ちゃんっていうのは亮の相手役の女優さん。
人気雑誌モデルからタレントになった、背も高くて凄いスタイルの良い綺麗な女の人。
って言っても。
大人っぽいだけで亮と同い年ぐらいだと思うな、
それよりあのセリフ。…あたしも言われてみたいなぁ、
なんて妄想?ではなく、想像をしながら。
「…羨ましくない」
「なんでなんでっ!?」
あたしは樹にそう言って詰め寄る。
「俺にそんな趣味ないし」
本当に興味無さそうな感じで、近くにあった雑誌を取るとそれを見出した。
「趣味って、変な言い方しちゃダメだよぉ…」
少しあたしは笑って、横から樹の見ている雑誌を覗き見する。
「この洋服すっごい格好良いね!
…あ、でもこっちの……うあっ?!」
樹に似合いそうな服を見つけて興奮するあたし。
その瞬間、急に自分の身体が何かに引き寄せられるのが分かって、気が付けば樹の腕の中にあたしは居た。
「何か今日、俺…
ずっとお前に振り回されっぱなしじゃない?」
なんかこう、いきなりこんなことされちゃうと…
「うーん…っ?振り回してる、かなぁ?」
「だいぶね、
はぁ…、何だかんだ愛梨には甘いよ俺は」
小さくハァっと溜め息をついて、あたしの髪を弄ぶように触る。
そんな些細な樹の仕草にさえあたしの心臓は大きく波打つから、やっぱりまだ慣れない。