君は僕のもの
あー、
人生で一番の不覚かもしれない。
「あ…、あっ!!…っ」
一瞬で愛梨の顔はりんごみたいに真っ赤になって、
細い指の手でその顔を隠そうとする。
無駄なのに…、な。
「もう死んでも言わないからな」
愛梨から離れてベッドに仰向けで寝て目を瞑って、
俺は言う。
…絶対に言ってやんない。
どんなに泣いて喚いても言わない。
決めた、絶対に死ぬとか言われても言わない。
「…樹?
その…っ、ありがと、ドキドキしちゃった」
目を瞑ったまま少しだけ横目をうっすら開けて見てみれば、
真っ赤な顔で俺のことを見ている愛梨がいた。
「もう忘れて」
ホント忘れてほしくて仕方がない。
俺はまた再び目を閉じた。
すると少しの長い沈黙が生まれて、
聞こえなくなった愛梨の声に、どうした?とか思いながら目を開こうとした時…。
「…っ?!」
唇に柔らかいものが触れて、目の前にはかなり至近距離にいる愛梨の顔。
「さっきのお返し…、ねっ?」
まさに不意討ちとはこのこと。
何だかんだで、…俺はやっぱ振り回されてる。
さっきも思ったけど、
やっぱり不覚。
こんな感じで今日の一日は過ぎていった。…わけで。