君は僕のもの




夏祭りの前日。



あたしは美菜と二人で、久しぶりに学校の近くにある喫茶店まで来ていた。


美菜は最近、ダイエットだとか何だとかよく分からないけど…、
ウーロン茶にハマってるらしくて、…だからそれしか飲まない。




…全然スタイルいいのに。

そんな“ダイエット”なんて言葉が微妙にあたしの胸をチクチク…と。

だってあたしよりも背の高い美菜のがスタイル良いんだもん。


なんて、そんなことを思ったりするけど。さ?



「…それでねっ?結局やっぱり夏祭りは美菜の家で二人で過ごす事にしたのっ!」


とても嬉しそうに美菜は目尻を垂らして笑い、一口だけウーロン茶を口にする。



何で美菜は『あたし』と『美菜』っていう呼び方で自分を呼ぶんだろ?

…あ、でもそういえば昔からそうだったな。



「そっか、その方が楽しめそうだよね、大事な誕生日だしさ!!

でも…本当二人が仲直りしてくれて良かったよぉ」



あたしがそう言うと美菜はケラケラと笑って、


「ありがと、何か矢上にも助けてもらっちゃったね」

「…ふふ、樹は本当優しいんだから」



そう言ってあたしが顔を緩ませると、美菜は少しだけさっきとは違う笑みを浮かべ、



「そういえばさ?

…愛梨たちってどこまで進んでるの?」

「え、…どこまでって…?」



飲もうとオレンジジュースに手を伸ばそうとした瞬間に、その伸ばそうとした手を躊躇してあたしは聞き返した。




「キスまで?それとももうヤッちゃった?」


平然と真顔で美菜は言うと、あたしに答えを求めているのか、グイグイと強引に詰め寄ってきた。



“こういう話”は、前から美菜の得意分野。


そしてあたしの苦手分野。

< 127 / 252 >

この作品をシェア

pagetop