君は僕のもの




「お母さんも昔は浴衣着てお祭りに行ったわぁ〜
もちろん、お父さんと!!」


あたしに浴衣を着つけながら、楽しそうに自分の昔話をするお母さん。


お父さんが一目惚れして猛アタックを受けたっていう話しも、
当然ながらよく聞かされるの。


「へぇー!何かいいねそういうの」


あんまりお母さんが嬉しそうに笑うから、つられてあたしの顔も緩んでしまう。





最後の帯をあたしに巻きつけてから後ろに飾りを付けると、満足げにお母さんは『凄いでしょ?』なんて言ってみせる。


まぁ、確かに浴衣を着つけるのって大変らしいから、凄いなってあたし自身もちょっと思ったりするかもしれない。



お母さんは何かとこういうことには器用なんだよね…



「いっちゃんも見惚れちゃうんじゃない?」

「…な、何言ってんのっ?!」


そしてこういうあたしを茶化すようなからかうようなこともよく言ってくるから、


本当、子供っぽい。




すると玄関からインターホンを鳴らす音がして、
はいは〜いとか言いながらドアを開けて、そのインターホンを鳴らした人物とお母さんが何かを話している声が聞こえた。



あたしも急いで洗面所に向かって、髪型とメイクを少しだけチェックする。


「…大丈夫」


無意識に口からこぼれてしまう。




「…愛梨〜、いっちゃん待ってるわよっ!」

「うんっ!!…今行くっ」

急ぎ足で玄関まで向かった。


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