君は僕のもの




「今日、楽しみだねっ!」

「でも人ごみ嫌いだし」


ちょっと…でもない気もするけど嫌そうな顔をしながら樹は言う。



樹はこういうお祭りとか、とにかく人ごみが嫌い。

これも昔からずっとだから、こういう返事には慣れてるけどさ。


人と関わったりそういうのが樹にとっては面倒なことらしいし、


とか意味の分からないことをまた考えながら、



「…でも来てくれたじゃん」


それでもいいよって言ってくれたのが嬉しかった。

だからあたしも何故かさっきからずっと笑顔のまんま。


だってやっぱり嬉しい!



付き合うようになってから、多分世間では当たり前のことだろうけど…
命令的なパシリはほとんど無くなったし、前の5倍は優しくなった!!!

…ちょっと大袈裟かもだけど。



「お前が行きたいって言うからだよ」

「そうだね、うんっ

…あっ!!屋台とかいっぱい見えてきたぁ!」


キャッキャと騒ぐあたしとは対照的に表情がさっきよりも更に嫌そうになる樹。



「わたあめっ!わたあめ食べようよ!」

「俺いらない」


即答でそう言われながらも、
あたしの足は自然にもわたあめの方向へと向かっていく。



「いくらですか?」


今日の為にお財布の小銭を小さな小銭入れに入れ替えてきたんだよね!!



「お姉ちゃん可愛いから…100円でいいよっ!!」

「え、そんなぁ…、ありがとうございますっ」


そんな屋台のお兄さん人の褒め言葉にだいぶ照れて浮かれた気持ちになる、
単純なあたしはもう乗せられてニヤニヤにやけながら100円を手渡そうとした時、



「ん、」


あたしの真横から手が伸びて、屋台のお兄さんへその100円を突きつけた、



「…い、樹いいの?」

「お姉ちゃん彼氏持ちだったんだぁ〜、残念!」

そう言いながらお金を受け取って、あたしにわたあめを差し出す。



「またねっ!」


お兄さんに笑顔でそう言われてあたしも少し会釈をすると、


先に歩きだしてしまった樹の方に小走りで向かった。


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