君は僕のもの
「…っねぇ!待ってよぉっ」
スタスタと歩いて行ってしまう樹の元へあたしは走りにくい浴衣の裾を手で少し持ち上げながら走る。
「ねぇ、何でお金出してくれたの?いつもなら自分で払えって言うのに…」
やっと樹の隣に行くことができて、樹の顔を横から見上げてそう聞いた。
「別に、
つか俺が金出したら何か悪いわけ?」
「う、ううん、悪くないけど…」
刺々しい樹の言い方に肩が少し下がる。
何で怒っちゃうの…?
ただ、聞いただけなのに。
あたしは手に持っていたわたあめを小さく千切って口に運んだ。
やっぱり何か…、樹の歩く速さがいつもより速くて、しかも今日は浴衣を着てるから、どうしてもなかなか同じ速さで歩く事が出来ない。
「ちょっと樹、速い…あっ?!」
「…あっ!」
っ!?
何かにぶつかった衝撃で目を瞑る、
少ししてから目を見開いてみれば目の前にかき氷がカップから零れるように地面に散らばっていた。
あたしがぶつかっちゃったから…
「…あっ、あの、ごめんなさい!!」
しどろもどろでそうあたしが言うと、
そのあたしがぶつかってしまったらしき人は柔らかく笑って、
「ううん、大丈夫だよ?
俺がちゃんと前見てなかったからいけないんだし…
君こそ、浴衣汚れちゃったよね?ごめんね」
そう言うと、彼はあたしにハンカチを差し出した。
「…あ、ありがとうございます」
そのハンカチを差し出した“彼”をポカンとした顔で見ていると、その彼が話し出した。
「今日は、一人?」
その言葉にハッとして、周りを見渡す。
すると少ししてからその、あたしが一緒に来た…、というか樹があたしの方へ向かって来た。