君は僕のもの
「…マジお前いないからどうしたかと思った」
少しだけ息を切らして樹はあたしのことを見ると、すぐにあたしの隣にいるその“彼”を見た。
それはまた、怖い顔で。
「あっ!!…あたしがぶつかっちゃって、その時に浴衣が少しだけ汚れちゃってね?…そしたらハンカチを貸してくれて…」
やっぱり説明が上手くないあたしは、とりあえず自分なりにその事を樹に伝えた。
「…こんな可愛い子、一人にしちゃダメだよ?」
その“彼”は樹に向って笑いながらそんなことを言った。
「アンタ、誰?」
「…樹っ!」
相変わらずな樹の態度にあたしは少しだけ注意というか何というか、
…でも樹は案の定かなり不機嫌な表情。
いくら何でも初対面でそんな態度…
あたしのことだってハンカチまでくれた優しい人だよ?
「あ、そっか俺名前言ってなかったね、
…俺は佐藤英二っていって、近くにある西校の2年だよ」
え?…あたし達と同じ高校!?
「あたし達も西校です…1年生ですけど、」
あたしが少しばかり力みながらそう言うと、その…佐藤先輩は微笑んで、
「知ってるよ、だって俺…愛梨ちゃんのこと知ってるもん!
…あっ!ごめん!!!友達が待ってるからもう行くわ!またね、愛梨ちゃん」
佐藤先輩はポケットで鳴りだした携帯を取り出してからディスプレイをチラッと見てそう言うと、
そのまま爽やかに走って行ってしまった。
それより、何であたしのこと知ってるの…?
そこら辺の疑問が取れなくて、少しの間だけあたしは立ち尽くしていると、隣から一声。
「何なのアイツ、ウザい」
さっきよりも更にとてつもない不機嫌顔の樹はそう言うと、あたしの腕を掴んで歩きだした。
「…っ??樹…どこ行くのっ?」
急に動きだした樹に驚くあたしに対して、何も言わない樹。