君は僕のもの
…でも、
まさか樹に限ってそんなこと、あるわけないよね。
何て。そんなことを思いながらふと視線を樹に送った。
「だったら?つか…言うな、そういうこと」
すると急にあたしから顔を逸らす樹、その顔は何だ赤い?ような気もする。
「あはは…っ」
そんな普段、樹が見せない表情にに思わず顔が緩む。
無意識にも口元は笑ってしまい、声を出しているつもりはなかったのに声を発して笑ってしまっていた。
「なに笑ってんだよ」
さっきまでの可愛かった樹はあっという間にいつもの不機嫌顔に戻ってしまい。
ムッとした表情であたしを睨みつける。
「だって…嬉しいんだもん!!樹ってそんなやきもち…?とか妬かないような人だと思ってたから」
あたしの表情はきっと樹にとってみればムカつくぐらいに笑顔だったんだろう、樹の顔が更にもっと嫌そうになる。
「…俺だって知らなかったよ、こんなの」
「ふははっ…」
やっぱりあたしはこんな、なかなか見られないだろうと思われる樹を見てしまうと。…どうも笑いが止まらない。
というよりも、緩む顔を抑えることが出来ない。
だって…さ?
やっぱり、嬉しいから。こういうのって、
「笑うな」
不機嫌そうに…けどどこか大人っぽい表情をして、
樹はあたしの口元を自分の大きな手の平で覆うようにして触れた。
っっ!
「黙れよ…」
色っぽくそう耳元で囁いてあたしの口元に添えてあった手をどける。
そして少しずつ速まるあたしの心拍数。
このままじゃ、樹に聞こえてしまうんじゃないか?と思うくらい。
「ズルイ…樹ばっか余裕でズルイよ」
思っていた心の声が勝手に口から出てその瞬間に樹は不思議そうな顔をしてあたしの目を見る。
「ズルイって何…?」
案の定そんな言葉が返ってきて。
何も分からずにキョトンとした表情をする樹にクスッと小さく笑ってしまい。
「秘密だよ」
そのまま少し微笑み掛けてから樹の首に手を回した。