君は僕のもの




…こういう時。


こういう時にいつも…“樹には敵わない”って思う。




「…ねぇ、分かった?」

思わず吸い込まれてしまいそうな瞳であたしにそんなことを言って、



頷かないなんてこと。出来るはずないじゃない…


「ん…っ…分かっ…た…」

断れないあたしの性格と、この樹の主導権を握った瞳が何よりあたしにそうさせた。



絶対服従。


これが樹に対して絶対なのかもしれない。




「ま、どうせ無理だろうけどね」

樹はそう言って少しあたしから離れる。



…無理だろうね、

って…思ってるならこんなこと言わなくてもいいのに。




あたしも上にいる樹から、離れるように横にずれようとした、



でも…


「どこ行く気?…離さねぇよ、今日は」


そう意味深な微笑みで樹はそう言う。

樹の言う“今日は”という言葉にトクンと音を立ててあたしの胸の中のものが熱く波打つのが分かった。



「ん?…今日、は?」

アハハと妙な苦笑いが浮かんでしまうあたし。


そしてあたしの脳裏には変な考えが浮かびあがってしまったわけでして…



「何?…何か文句あるの?」

逆にそんなことを言わちゃうと、あたしは反論できない。



だ、だって…相手が樹となればそんな簡単には、いかないでしょう?


「いや…いやぁ~…」


相変わらず曖昧な感じでそう答えるあたし。



その瞬間にいつもの悪戯な笑みがそこにあった。


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