君は僕のもの
『あたしたちも…、帰ろっか?』
コイツはこの場になって何をそんなふざけたこと言ってんだ?
「…何が帰ろっか?、だよ」
俺はそのまま出口とは反対の方向に歩き出すと、…愛梨も俺が機嫌が悪いのに気が付いたのか、後ずさるようにする。
「な、なんで怒ってるの?
…あっ!遅くなっちゃったから?…急用だったから、ね?」
「そうじゃない、なんでアイツと一緒にいるの?何でアイツがお前の電話に出たの?」
とにかく質問攻めで俺はそう言う。
すると愛梨の背後は壁になり、もう後ろにさがることは出来なくなった。
「違うの、本当違うの!
…樹から電話きて、出ようとしたら、その…英二先輩に取られちゃって、そしたら…」
真横の壁に左手を置いて、逃げられないようにしながら愛梨の顎を右手でグイッと持ち上げる、
すると愛梨の声もだんだん聞こえなくなって…、
「黙ったら分からない」
「…その、えっと…、ごめんなさい…」
最終的に下を向いたまま何も言わなくなる。
「何にも、…されなかった?」
少しさっきよりは冷静になって俺は優しく愛梨にそう聞いた。
「…ううん、されてない」
まだ下を向いたまま愛梨はそう言う、そんな答えに俺自身、少し気が楽になった感じがした。