君は僕のもの




何もされなくて良かった…、


緊張の糸が解けた俺は、その場にしゃがみ込んだ。





「…い、樹?」


急にしゃがみ込んで頭を抱えている俺は、愛梨にとって不思議で仕方ないんだろう。




ふと上を見上げてみれば、『どうしたの?』なんて言ってくる。

どうしたのじゃないだろ。




「本当…、冷や冷やさせないで…」


「…ん、ごめん、ね?」



そんな顔で言うなよ…、何か許してもいいかな?なんて思ってきてしまう。


俺はそのまま立ち上がると近くにあった椅子に座った。




ハァっとため息をつく。


最近色んなことがありすぎだろ、本当に…。





「…愛梨、こっちきて」


少しだけ微笑んで、こっちへ来るよう愛梨に手招きをする。




「なにっ?」


まったく危機感も持たずに、言われるがまま俺の側まで来ると、




「いーつーきーっ!!」


なんて言ってくる。





「…俺、許してないからね」



< 160 / 252 >

この作品をシェア

pagetop