君は僕のもの
「…てか、愛梨知ってるー?」
更衣室で着替えてる途中に美菜が何かを言い出した。
「ん…っ?知ってるって何が?」
つかさずそう聞き返しながら、制服を脱ぐ。
「毎年やってる名物行事らしんだけど…
学年ごとの一番格好良い、イケメン?を決めるコンテストがあるらしいんだよぉ~」
さっき貰ったウェイターの制服を少しずつ着ながら、『ふ~ん』と興味がないような素振りでそう言った。
だって興味ないし…、
「一年の1位候補って、矢上らしいよ?」
ワンピースの後ろのホックを一生懸命している時、美菜の口から聞こえた“矢上”という言葉に思い切り反応ずる。
…え、
あたし聞いてないよ?
「…樹は、知ってるの?」
「知ってるも何も、…本人がいいよって言わなきゃエントリー出来ないって言うし…
誰かが無理矢理やったんだろうね~」
その時あたしは美菜が言った最後の『誰かが無理矢理やった』という言葉なんて耳に入っていなくて、
「…、」
「愛梨…?
そんな気にすることじゃないって~」
単純ですぐ真に受けるあたしは、それだけで胸がキューっと締め付けられてしまった。