君は僕のもの
一番奥にあった空き教室に入ってからの、しばらくの沈黙。
「…あのさぁ、
まぁ、…ごめん」
沈黙を破るように俺はそう言うと、
チラッと一瞬だけ愛梨の表情を窺うように見た。
すると愛梨が急に下を向いて、
「…ごめん、ね」
顔を上げて眉毛を八の字にしてそう言った。
「…嫌だったの、樹がそんなの出るって聞いて、」
今にも泣きそうな表情で愛梨が言うから、
無性に抱き締めたなって、
ゆっくり手を伸ばした時…
─ガラガラッ!
「…樹、行くよーっ!!
って、…お取り込み中でしたか…っ?」
突然、空いた教室の窓。
…固まる俺。
「…間が悪いんだよ、お前」
俺は惜しい気持ちを残しながらも、愛梨に近付いた手を戻して、
「…後でね、」
愛梨にそう言って翔太の元へと向かった。