君は僕のもの
「あ、…悪いけど「彼女さんっ!」」
樹が何かを言おうとした時、突然その子は大きな声でそう言うと、あたしの方へ振り向いた。
思わずあたしも硬直して、
…え、何であたしが呼ばれてるの?…なんて思った。
「最近一緒にいないよね?
だからさ、今日だけ譲ってよ!」
あたしのそばまで来てそう言うと、さっきまでの笑顔とは違って…
少しあたしを睨みつけるような目をした。
…そっか、
周りにはもうそんな風に見えてるんだ。
それに樹は何も言わない、いつもなら…、とか思って余計悲しくなってしまう。
「……っ、…いいよ、別に」
泣きそうになるのを堪えながらあたしはそう言うと、そのままホールの方へ逃げるように走って行った。
「ちょっと愛梨っ!?」
何も知らない美菜は、あたしの後を追ってきて、
「…やったぁー!超嬉しいんだけど!!
じゃぁ…行こうっ?矢上くんっ」
嬉しそうなその子の声、
もうよく分からなくなっていた。