君は僕のもの
「…っ、」
持っていた布巾を何故かギュッと握りしめて、その視線から逃げるようにあたしは下を向く。
…やっぱ、駄目だよぉ。
あの子はどうしたの?
一緒に文化祭回るんでしょ?違うの?…ねぇ、
そんな事ばかりを頭の中で考えて、
「…愛梨っ」
意を決したような表情で樹があたしの名前呼ぶ、…けどあたしは。
「…うん、」
最近上手く話していなかったせいか、やっぱり目を見て話す事が出来なかった。
「ちょっと…、いい?」
「うん…」
優しそうに、いつものようで、でもいつもとは少しだけ違うような雰囲気で樹はそう言うとあたしに手を差し出した。
…手を、繋げってこと、?
あたしは『どうしよう』とかそういうためらいの気持ちはなく、気付けば樹の手の平に自らの手の平を重ね合わせていた。
そうすればその重なったあたしの手をギュッと強く樹が握りしめて…
少しの安心が自分の中に訪れた。
「空き教室あるから、
…行こう?」
やっぱりいつもより優しい口調の樹、…調子が狂っちゃいそう。