君は僕のもの
一瞬だけ戸惑うように固まるあたし、
…けど、
「…樹っ」
あたしの視界はぼやけて、頬をスーッと何かが滑り落ちていく。
「こんなことで泣くなよ…」
樹はそう言うと、あたしを自分の方へ向き直させた。
「…みんな見てる…っ」
「そうだね、
でもその方がいい」
指で涙を拭うと、いつものように優しくクスッと笑う。
「その方が…いい?」
鼻をすすりながら言う。
そうすると意味深な笑みを浮かべてあたしの手を取る。
「…後はよろしく」
「はいよー」
美菜と樹がそんな会話をすると、
急に樹はあたしの腕を掴んだまま歩き出す。
「…どこ行くの?」
「楽しいとこ」
即答でそう答える樹。
…楽しいところ?
どこだろう…
「…ふはは」
考え込むあたしを見てケラケラ笑う樹。
「ちょっと…っ!」
「はいはい」
でもその顔はまだ笑ったまま。