君は僕のもの
「…ちょっ、誰か誰か…
あ、愛ちゃん!手伝ってよ!!お願いっ」
薪のような物を運んでいた翔太は多分、一人で持ちきれなかったのか一番近くにいた愛梨に声を掛けた。
「あ、うんっ!いいよ」
そんな困った姿の翔太を見て、アイツが断れるはずもなく。
予想通り、将太の元へ駆け寄って薪を半分くらい持とうとしていた。
…あんなの持てんのか?愛梨は、
と、そんなことを考えていれば。
「そんなに見ちゃって~」
あ、
声を聞いただけで嫌な感覚。
「見てるって何を」
「怖いなぁ~、
もっと愛想よく話せないわけ?」
そもそも愛想って何…?逆にそう聞きたい気分。
「これが普通だから無理」
でも少しだけ笑ってそう言った。
「矢上ってさぁ、
愛梨のこと好きなんでしょ~?」
これはまた単刀直入。
「何で?」
「…はぁ、本当に2人とも奥手なんだよねー」
ハァっと溜め息を吐きながら、そんな事を言われる。
何で俺が溜め息をされなきゃいけないわけ?
…と、思いつつも。
「奥手…、ね」
「そう、奥手!!
そうゆうとこは、翔太のことでも見習ってよね?」
「俺は、アイツみたいに馬鹿じゃないから見習うことなんてねぇよ」
ちょっとばかり笑いながら俺はそう言う。
それに俺は奥手なわけじゃない。
「あんなんでも結構、愛梨はモテるんだからねっ?
だから、さっさとしないと取られちゃうぞ~』
「ないね、そんなこと」
俺は、そう言って愛梨たちがいる方へと向かった。
「…あらあら、すごーい自信」
後ろでそんな声が聞こえた。…気がする。