君は僕のもの
「何何っ!?
…もしかしておれの事が好きになっちゃった?」
ちょっと見つめたっていうか…、見ただけなのに。
ふざけるように、翔太くんはあたしをからかって言うと、近くにあった岩に座った。
「…美菜に言うよ、」
あたしも隣にちょこんと座ると、ほんの少し睨みつけて言い返す。
すると表情は一変して、
「嘘だから~っ!!余計な事は、言わないでよねっ
…で、好きなんでしょ?」
ふはは…っ、必死。
けど、質問はまた元に戻ってしまった。
「……っ!!
つか、何でそんなこと聞くの?二人してさ…、」
遠くにいる美菜をチラッと見てからちょっと疑うような目をしつつ聞き返す。
「心配?…いやっ、気になる?
…まっ、とにかく俺たちは気になるわけよ!君たちがなかなかくっつかないから」
得意げというか、言ってやった!みたいな顔しちゃって…
すると急に勢い良く立ち上がる。
「…くっつく、くっつかないって言うけどさ、
樹はあたしのことなんて、どうも思ってないし…それに…、」
気が付けば感情的になっていた自分に気が付いて、手で口元を覆う。
…しまった!!
視線を少しずつ向けてみれば、…ニッコリと笑っている翔太くんの姿。
「つ・ま・り!…それは愛ちゃんが樹を好きだって発言だよね?」
…う゛…っ…、
やられてしまった、
そうとしか言いようのない感じ。
「だ、だけどっ
…樹は、誰も好きになんかならなそうだし、」
そう、それはあたしがずっと疑問に思ってきたことの中の一つ。
樹に好きな人がいるなんて話は一度も…まるまるこの15年間、聞いたことが無かった。
「本当に、…そ~かなぁ?」
首を傾げながら、何か知っていそうな表情で翔太くんは笑う。