君は僕のもの
その日のことは、そんなによく覚えてなくて、
気が付いたらもう家にいた気がする…。
何食べたっけ?
何話したっけ?
何をしたっけ?
全部、覚えて無いかも、
“今も昔も、ずっと一人の女の子だけを好きなまま”
その翔太くんの言葉が、
あたしの胸に重くのしかかった。
こうなってから樹のことが本当に好きなんだと気が付くなんて、あたしは馬鹿だなぁ。
どんなに思ったって、
どんなに好きでいたって、
結局の結末は…叶わなかった、になる。
考えれば分かり切ってる。
…好きな人に物を買わせる?
…好きな人に面倒な事させる?
もし、樹があたしを好きだったとしたら、こんなことしない。
優しくしてくれるもん。
「玉砕だぁ…」
そう呟いて頬を涙が伝うまで、そう時間は掛からなかった。
…あたしはそれをパジャマの袖で拭うと、…ハァっと深いため息を一つ。
こんな想いに、気が付かない方が良かったと、何度も何度も思った。
知らない方が良いことも、あるんだね…