君は僕のもの
一度だけ顔をあげた時の愛梨の目は、涙がいっぱい溜まっていて。
今にも零れ落ちそうだった。
「…はぁっ、俺、戻るから」
もう俺は戻った方がいい、これ以上いたらもっと余計な事を言って傷つけることになる。
そう思って後ろを振り返って歩き出したその時だった…。
「…そ、そんなにコーヒー牛乳が大事っ!?」
っ!?
突然、後ろから聞こえた愛梨のでかい声に思わず俺も後ろへ振り返った。
驚きのあまり、ビクつく身体。
見開く目。
「え…、どうしっ「なんなのよっ!?」」
俺が口にした言葉を遮るように、愛梨はそう叫んだ。
初めて見る愛梨の姿に俺は何も言えないまま黙り込む。…愛梨?
「樹は…、樹は…、
何であたしになんでも頼むの?あたしのこと…何だと思ってるわけ?」
頬を伝って流れる彼女の涙を拭ってやろうとか、
抱き締めて、…落ち着くまでずっと抱き締めてやろうだとか…
そんなこと考える余裕も無かった。
「幼馴染で…?昔から知り合いで?
そりゃぁ、都合がいい女だよね、何でも言うこと聞く女だもんね?
でも…、でもあたしは、そんなの辛すぎるんだよ…っ!!」
そんな事を愛梨が思っていたなんて、そう思うと柄にもなく胸が痛んだ。
「ちょっ、落ち着けって…」
俺がそういって愛梨に近付くと、愛梨は後ずさっていく。