君は僕のもの




「…こんな想いを、あたしはしたかったわけじゃないよ」


こんなに涙を零して愛梨がとても切なそうにそう言うから。

さっきよりも俺の胸はもっと痛んで、何も言葉にすることが出来なくなった…




…しばらくの沈黙の後。

こんな時、何も言いだせないまま涙でグシャグシャになった彼女をただ見つめることしか出来ないような自分。



「もう…っ、やめる」


抜け殻のように小さな声で愛梨はそう呟くと、俺の目を見つめた。



「…やめるって、何を?」

自分でも不思議なくらい動揺しているのが分かった。


愛梨の口から出た“やめる”という言葉がどんな意味をしているのか、…きっと俺はちゃんと分かっていた。




だけど…、



「…樹の言うこと、聞くをのだよ、

もう、樹とは…、関わりたくない」


最後の『関わりたくない』という言葉を言った時、愛梨は俺から目を逸らした。




そう言われてもまだ何も言えないままの俺の横を、愛梨が通り過ぎようとした時、





俺は思わず愛梨の腕を掴む、

その時に見えた彼女の表情は切なそのもので。


…どうしてそんな顔をするの?


違う、俺がさせたんだ。そんな顔を…




そう思っていた時、愛梨は俺からバッと手を離して、保健室から出て行った。




一人取り残されたままの俺は少しの間その場所から動けず、

ただ茫然と立ち尽くして…




帰るか…、

俺はそう無意識に思うとそのまま何も持たずに歩きだした。



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