君は僕のもの
―ガラガラ…
もう一時間目の授業が始まっているであろう、教室のドアをあたしはゆっくりと開けた。
なるべく目立たないようにしたのに結局はクラスみんなの視線は、一気にあたしに注がれる。…何だかこういうの苦手。
まぁ、だったら遅刻するなって話になるんだけど。
「…す、すみませんっ」
あたしは少し下向きかげんに教室に入ると、
ゆっくりと自分の席へ近付いた。
「何だお前、寝坊か?」
英語の教師で、隣のクラスの担任がそうあたしに聞いてくる。
ちょっとクセのある変な人。
「あ、…はいっ」
一応そう答えると、
また再び授業は再開された。
チラッと後ろの方の席を見てみれば机に伏せて寝ている樹の姿があって。
…あぁ、やっぱり、
あたしの家へ来れなかったんじゃないんだ。
来なかったんだ。と、
本当に全て、無くなってしまった。
全部、全部、無くなっちゃったんだ…
心の中でそんな言葉が生まれ、
あたしは机から英語の教科書を取り出した。