君は僕のもの
…っあぁ、
来ないで来ないで、お願いっ!
どうか、…どうか…
すると止まる足音。
「そんなに嫌いかよ、俺が」
その切なそうな声に思わずキュゥっと掴まれたように心臓が痛くなる。
…っ。
そのままあたしは後ろを向くと、やっぱりそこには予想通りのいた人がいて、
…表情はとても悲しそうだった。
きっとあたしがこんな表情を彼にさせてしまってるんだ、…そう思うと苦しい。
「…な、なんで?」
けどそんな自分から出てきたのはこんな言葉。
「ん…、いやっ」
樹にしては珍しく口ごもるような、
もしかして何か真面目な話をしようとしてるの…?
でも今更そんな、…何て思ってしまった。
何だかどうしたらいいのかが分からなくて、この場を何とかしなきゃと思う程に、
あたしは何も言うことが出来なくて。
…すると、
「あの…っ、
矢上くん…ちょっと、いいですか?」
沈黙が流れていたあたし達のなかに急な声が聞こえたと思うと、その声は樹に向けられたもので、
あたしの声ではなく他の女の子の声だった。