君は僕のもの
しばらく歩いてから正気に戻る。
…あたし、何してんの?
「…ちょっとっ!
何なの?ねぇ、どうしたの…っ?」
あたしが何を聞いても樹は言葉を発する事はなくて、ただひたすら…、多分家?に向かってるんだと思うけど。
…本当に分かんないよ、
樹はいっつも分からない。
あんなこと言って、もう嫌だなんて言って、
なのにあたしにはこの手を振り払うことも、樹を突き放すことも結局は出来やしない。
こんな状況でさえ、あたしの胸はドキドキとしていて。
ズルイ女だ、
つくづくそう思ってしまうんだ。
「入って…?」
急に樹が立ち止まって、視線をチラッと家に向ける。
家に入れ…、と。
何だかいつもと違う変な違和感の感じられるあたし達の空気。
「…おじゃまします、」
いつも通りにあたしが言うと、リビングからヒョイッと智子さんが顔を出した。
「いらっしゃーい!!
あっ!、今日ね?プリン買ってきたのよ~
愛ちゃんおいでっ」
智子さんは笑顔であたしに手招きをする。
「あっ、じゃぁっ「…いいから、つか来て」」
リビングに向かおうとしたあたしの背後から聞こえる低めの声に思わずビクッと身体反応するのが分かった。
そのままあたしの腕を掴んで樹は、二階へ連れて行く。
後ろからは『あらいらないの~?』なんていう声が聞こえてくる。