君は僕のもの
「う、う…んっ」
何かよく分からないけど、たったそれだけの言葉を言うのにも声が震えてるのが自分でも分かった。
─するとその瞬間、
「…っ!?……んっ、」
突然近付いた距離。
突然塞がれた唇。
何が何だか自分でもよく分からなくて、どうしていいのかも分からなかった。
分かるのは今この瞬間、…あたしは樹にキスをされているということ。たったそれだけ。
「…ん、っねぇ!…なんなの…!?」
視界はぼやけて、あたしは自分の手で唇を覆った。
あたしが聞いても樹は何も言わない…
「…ねぇどうして?
何であたしに、…こんなことするの?
…あたし、あたし…もう本当、辛すぎるよっ」
ボロボロと涙を零しながらも、あたしは必死に途切れる呼吸を抑えながらそう言う。
すると、樹は優しくあたしの涙をワイシャツの袖で拭った、
「愛梨はさぁ…、誰が好きなの?」
樹は複雑そうな表情でそうあたしに聞く。
けど、そんな樹に負けたくなくて、
「い、い…
樹は…、誰が好きなの?」
もう目を逸らさないように真っすぐ樹の目を見て、そう聞き返した。