君は僕のもの
…樹side




結局今日は何度も話し掛けようとしたけど、愛梨は自分の席から全く動かなくて愛梨の表情も何も分からないまま、


…時間はもう帰る時間になっていた。




何だかんだで、翔太は先に帰ってるとか言うし、

ふざけてる。







玄関に向かって歩いていると、目の前に見覚えのある後姿。



─その瞬間、



自分でもよく分からないけど…


その見覚えのある後姿に俺は、無意識で声を掛けていた。



「おいっ!」


「…っ、」




俺がそう言った瞬間に彼女の身体がビクッとしたような気がする。


そしてそのまま動く事はなく立ち止まったまま。



…こっち、向け…、



少しずつ近付いて行っても、彼女は振り返らないまま。

そこまで俺が嫌なの?


そう思うと無性に悲しい。



「そんなに嫌いかよ、俺が」

と思わず口からそう葉が漏れた。


…何かここまで避けられると、

いくらこんな俺でも“辛い”って気持ちがある。




すると彼女…、

愛梨は。こっちを振り返った。




「…な、なんで?」

声を絞り出すように、どこか哀しい瞳を俺に向けてそう聞く。



そんな愛梨の目を見て、

「ん…、いやっ」

口ごもってしまう俺。


『なんで?』なんて聞かれて、いつもの俺なら適当に上手く答えることが出来てたのに、今の俺はまったく答えることが出来ない、

それどころか、言葉が詰まってしまう。



今の俺に『余裕』なんて言葉は当てはまらない。



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