キミの音を聴きたくて
「陽葵」
「え……」
名前で呼ばれた理由はわからない。
そんなに苦しそうな表情をする理由もわからない。
でも確かに助けたいと思った。
手を差し伸べたいと思った。
それだけで、私が近づきたいと思ったことは説明がつく。
そんなに儚い彼を、守りたいと感じた。
「俺は、お前を許さない」
私が、悪いんだろうか。
あの日の言葉と、目の前にいる先輩が重なる。
────『俺の大切な人を奪ったお前を、一生許さない』
きっと、違う。
そんなわけがない。
そう思っているのに、体が動かない。
何しているの。
こんな風に固まっていたら、彼の思うツボじゃない。
ほら、早く何か言って誤魔化さなきゃ。
そうは思うけれど、体は一向に動いてくれない。
だって私は、彼のこの目を知っている。