キミの音を聴きたくて
「ちょっと、陽葵?
あ、この方は奏汰くんって言って……」
「知っているから。
部屋戻るね」
お母さんに悟られないよう、早口にそう言って部屋にこもる。
思い出したくなかったのに。
こんな最悪な形で会うことになるなんて。
どうして今日に限って天音先輩がいるの?
せっかく日々ちゃん達と遊んで気が紛れていたのに。
どうして……?
気づけばドアは開いていて。
目の前には天音先輩が立っていた。
「……デリカシーないですね」
「それは今に始まったことじゃないだろう?」
女子の部屋に何も言わず入るなんて、意味がわからない。
本当に彼は何を考えているのか読めない。