キミの音を聴きたくて


『すみ、れ……っ!!
戻って来てくれよ!
お前がいないと、俺は……』



どんどん灰になっていくお姉ちゃんを前にそう言ってしがみつく男子がいた。



顔はとても整っているけれど、その顔はひどくやつれていた。




そう。
それが、当時は中学3年生の。



お姉ちゃんの彼氏だった─────天音先輩だ。




中学1年生のときから、ふたりは付き合っていたらしい。



きっかけはピアノ教室。



彼もピアノをしていたらしく、ふたりの距離が近づくのは必然だった。



それは後日、お母さんから聞いたことだった。




『お前が、澄恋の妹か』



抑揚のない冷たい声に振り返ると、彼らは鋭い目つきで私を睨んでいた。



冷たくて、寂しそうで、孤独な目。
今より幼い私にも、それだけはわかる。

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