キミの音を聴きたくて




「おね、ちゃ……っ」



気づけば頬には涙が伝っていた。




知らないうちに思い出してしまっていた。



あの消し去りたい過去を。
私の犯してしまった罪を。



もう後ろを振り返ったりしないって誓ったのに。



思い出したら苦しくなるだけだって、わかっていたのに。





当時は自暴自棄になったりもした。



お母さんが私を気にして話しかけてくれても。




『もう、なんなのっ!』



『お母さん、いつもうるさい!
放っておいてよ!』



『テレビもうるさい!
鬱陶しいから消してよっ!』




そう言って自分から突き放していた。



その度に悲しそうだったお母さんの顔を、私は未だに忘れられていない。

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