キミの音を聴きたくて
「うん。
本当に、良かった……!」
私は歌い切った。
お姉ちゃんの言葉を信じて歌えた。
聴いている人の心に届くように、響かせられた。
そして何よりも、楽しかった。
また輝けた気がした。
もう立ち止まってはいない。
きっと少しは進み始めていると思う。
あまりに嬉しくて、目から何かあたたかいものがこみ上げてくる。
それを隠すように、私は笑ってみせた。
クラスメートに囲まれて。
功績を残せたからといい気になって。
ひとりぼっちのまま取り残されているキミの心を、救えなかった。
「……おめでと。
これで俺は、いらないな」
私を見ながら天音先輩がそう呟いていたことなんて、知らなかった。