キミの音を聴きたくて


「困らせてごめんな。
……家まで送るよ、一緒に帰ろう」



「……うん」



急かされるようにそう言われて、彼が家まで送ってくれることになった。




気まずい雰囲気のままなんて会話が続かないんじゃないか。



そう思ったけれど、彼はそれを押し切って「大丈夫」と言う。



こんなに親切にされると、なんだか申し訳なくなってしまう。




それを伝えると。



「俺が音中さんと一緒にいたいだけだから」



と、なんとも紳士らしい答えが返ってきた。





初めて私に告白してくれた人。



クラスに馴染めていなかった私を、初めて『面白い』と言ってくれた人。



彼は、このクラスでの居場所をくれた、そんな人。

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