キミの音を聴きたくて
「……ピアノは弾いていない。
学校では、いつも作り笑いだよ」
「そう……」
表現が悪いかもしれないけれど、そう見える。
彼は本当の自分を見せようとしたことがないはずだ。
でも、お母さんは明るい顔で私の顔を見て口を開いた。
「陽葵、お願いがあるの」
◇◆◇
そんなお母さんの要望に応えるために、私は今。
天音先輩とふたりで歩いている。
会話はない。
それでも、目も合わせてくれないときより心が軽い。