キミの音を聴きたくて
「私、待ち続けます」
冬の風が、静かに吹いた。
「いつか先輩と歌える、そのときがくるまで」
私が今叶えたいことは、私の夢なんかじゃない。
お姉ちゃんの願いでも、天音先輩の望みでもない。
ただ先輩のピアノを聴きたいの。
「は?バカじゃねーの?」
きっと彼はもうピアノを弾かないと決意したんだ。
ただでさえ曲がったことが嫌いな人だ。
1度決めたことは簡単にくつがえさないだろう。
「なんなんだよ……」
低い声が胸の奥まで振動して響く。
次に何を言われるか……。
そんな恐怖が襲ってくる中、目を瞑った。