キミの音を聴きたくて
「澄恋のことを掘り返して、そんなに楽しいか?
俺のことをからかっているのか?」
「違います!
そんなつもりじゃ……」
天音先輩のことをからかうなんて、そんなことするはずない。
だって彼を傷つけたいわけじゃない。
嘲笑いたいわけでもない。
ただ手を差し伸べたいだけなんだから。
「俺は……本気で、澄恋のことが好きだったんだよ……っ!」
「知っています。
お姉ちゃん、いつも天音先輩のことを話してくれていました」
あれが、最初で最後の恋愛トークだった。
今思えば、あの日以来はそんな話をしていない。
「クールで優しくて頼りになる人。
お姉ちゃんはそう言っていました」
その頃と比べれば比べる度、その通りだと思った。
ぶっきらぼうな言葉の中にも不器用な優しさが詰まっていて。
自分のことよりも他人を優先できる、そんな人。