キミの音を聴きたくて


「私は先輩の言葉で、また歌手になりたいって思えました。
希望を、夢をもてたんです」



先輩は黙って耳を傾けているようだ。



私の言葉なんて、心に響くような素晴らしいものではない。




でも、この思いだけは負けたくない。



お姉ちゃんにも、誰にも。



だってこんなにも好きで恋焦がれたのは初めてなんだから。



この気持ちは本物だと、証明したい。




「だからっ……先輩も後悔しないで、自分のしたいことに正面から向き合ってください!」



年下のくせに、って思われるかもしれない。



俺の気持ちなんてわからない、って思われても仕方ない。




でも、少しでもわかってほしい。



天音先輩と同じように傷ついて、それでも前を向けた人がいるってことを。

< 206 / 241 >

この作品をシェア

pagetop