キミの音を聴きたくて
「私は先輩の言葉で、また歌手になりたいって思えました。
希望を、夢をもてたんです」
先輩は黙って耳を傾けているようだ。
私の言葉なんて、心に響くような素晴らしいものではない。
でも、この思いだけは負けたくない。
お姉ちゃんにも、誰にも。
だってこんなにも好きで恋焦がれたのは初めてなんだから。
この気持ちは本物だと、証明したい。
「だからっ……先輩も後悔しないで、自分のしたいことに正面から向き合ってください!」
年下のくせに、って思われるかもしれない。
俺の気持ちなんてわからない、って思われても仕方ない。
でも、少しでもわかってほしい。
天音先輩と同じように傷ついて、それでも前を向けた人がいるってことを。