キミの音を聴きたくて


「ったく……なんなんだよ、お前は」



今度こそ、怒られる。
そう思ってまた強く目を瞑った。



でも、そんなことはする必要がなかったらしい。





「陽葵、これから空いているか?」



「……はい?
用事はないですけど」




怒るかと思いきや、いきなり何を言い出すんだろう。



やっぱりポーカーフェイスで、どこか掴めない。



いきなり突拍子のないことを言い出すときもあって、完全に彼の思考回路は理解不能だ。




けれど、今は本当の笑顔だとわかっているから反論さえもできない。



好きになったら負け、というのはこのことだろう。

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