キミの音を聴きたくて
「行くぞ。
初デートの場所」
“ 初デート ” を強調して言われ、不覚にも顔が赤くなってしまった。
付き合ってもいないのにそんなこと言うなんて。
以前にも同じようなことがあったけれど、そのときは苦手な先輩という位置づけだった。
その次は、お墓参りへ行った。
それが彼と出かけた最後だ。
それなのに、どんどん私の中で天音先輩は大きくなっていって。
今では生きる原動力ともいえる。
「はいっ」
大丈夫、大丈夫。
今の私なら、もう迷ったりしない。
深呼吸をして、踏み出す。
顔を上げて見えた世界は、どこか異次元のような気がしてならなかった。