キミの音を聴きたくて


「行くぞ。
初デートの場所」



“ 初デート ” を強調して言われ、不覚にも顔が赤くなってしまった。



付き合ってもいないのにそんなこと言うなんて。




以前にも同じようなことがあったけれど、そのときは苦手な先輩という位置づけだった。



その次は、お墓参りへ行った。
それが彼と出かけた最後だ。



それなのに、どんどん私の中で天音先輩は大きくなっていって。
今では生きる原動力ともいえる。




「はいっ」



大丈夫、大丈夫。



今の私なら、もう迷ったりしない。




深呼吸をして、踏み出す。



顔を上げて見えた世界は、どこか異次元のような気がしてならなかった。

< 208 / 241 >

この作品をシェア

pagetop