キミの音を聴きたくて



「はぁ、はぁ……」



歌い切った。
間違いなくそう言い切ることができる。



大好きな人と、憧れの人と一緒にステージに立てる。
こんなに幸せなことはないと思う。



今までにないくらい、楽しくて、充実していた。
体は疲れているけれど、そんなもの感じないくらいだ。




「よく、やったな。
陽葵」



久しぶりにピアノを弾いたせいか。
冬なのにも関わらず、彼の額にも汗がにじんでいる。



そして、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。




次の瞬間、その手が近づいてきて。



「えっ」



私の頭を撫でてから、体を引き寄せられた。

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