キミの音を聴きたくて
「────卒業生代表、天音奏汰」
そう言ったと同時に、一斉に彼へと拍手が向けられた。
全員が聞き入っていたに違いない。
だって私も……泣いているのだから。
彼は微笑むと、ステージから降りていった。
その目に涙が光っていたことは、言わないでおこう。
────卒業式は、たくさんの涙に包まれて終了した。
私が1番感動したのは、卒業生の合唱だ。
もちろん天音先輩の卒業生代表の言葉も素晴らしかった。
けれどそれ以上に、彼がピアノの伴奏をしていることに驚きを隠せなかった。
良かった。
もう、天音先輩は大丈夫だ。