キミの音を聴きたくて
◇◆◇
「天音先輩っ!」
卒業式が終わった後、在校生はすぐに下校することになっている。
……にも関わらず、私は今3年生の教室がある階に来ている。
「陽葵?
お前、どうした?」
少し引きつった顔で、先輩は迎えてくれた。
やっぱりその目は腫れていて、泣いていたことがわかる。
それを隠すようにわざとらしくそっぽを向きながら会話を始める。
「卒業おめでとうございます」
素直に口をついて出てきたのは、それだった。
彼はハッと驚いたような顔をしてから。
「ありがとな」
と、笑った。