キミの音を聴きたくて
「もう先輩じゃない。
奏汰、だろ?」
「えっ」
確かにもう同じ学校には通っていないし。
先輩とつけるのはおかしいだろう。
前にもこんなことがあったな。
そのときのことを思い返してクスリと笑ってしまう。
ふたりで出かけたときに『生徒会長』と呼んだら、『ここは学校じゃない』と言い返された。
そのときは確か、『会長』と呼ばれることを嫌がっているようにも見えた。
その理由は未だにわからない。
でも、そんないきなり呼び捨てで呼ぶなんてできない。
「か、奏汰……さん」
「は?」
どうやら “ 奏汰さん ” では不満だったらしい。
「奏汰……くん」
なんとか勇気を振り絞って呼んだ。
これでも男子を下の名前で呼んだことはないというのに。