キミの音を聴きたくて
「きっとお姉ちゃんも見てくれていますよね」
「ああ。
当たり前だろ」
フッと笑って空を見上げた彼につられて、私も上を向く。
雲は少ない。
まるでお姉ちゃんが笑っているかのように、空からは光が降り注いでいる。
大丈夫。お姉ちゃんは見てくれている。
私、あれからたくさん練習して、歌の技術を磨いたんだよ。
だから、安心して私と奏汰くんの歌を聴いてね。
「ほら、早く」
急かされるように彼のもとへ近寄る。
「奏汰くん………好きです」
「……そんなの知っているし、バカ」
呟くように彼の目を見て言うと、返ってきたのはそれだけだった。
何年もの年月が経って、勇気を振り絞ってやっと伝えたというのに。
『知っているし』のひと言で片付けてしまうなんて。
少し頬を膨らませたけれど。
奏汰くんのぬくもりは隣にあるから、大丈夫だ。