キミの音を聴きたくて
ステージに立つと、歓声の嵐。
人の前で歌うことがこんなに緊張するものだとは思わなかった。
「陽葵、大丈夫だ」
耳元でそう呟かれて、コクリと頷く。
マイクを持つ手から冷や汗が出てくるも、ギュッと握りしめる。
今日のためにたくさん練習してきたんだから。
最高のデビューを着飾ってみせる。
「私は音中陽葵です。
天音奏汰くんとは高校生のときに知り合いました」
「俺と陽葵の歌を、聴いてほしい」
奏汰くんがそう投げかけると、割れるような歓声が返ってきた。
さすが、プロのピアニストだ。
何度か弾き語りをしているところもテレビで見たことがあった。
やっぱり歌声も天下一品で、やっぱり『完璧人間』だ、と実感した。
思わず会場の迫力に圧倒されそうになる。